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2019年6月9日日曜日

【書評】日本式システムを打ち破るには『「超」入門 空気の研究』×『白本』

 

なぜ、日本の組織は息苦しいのか?

Q28 日本についてどう思いますか?
僕は日本がとても好きです。日本の美しい国土や文化、思慮深い人々の生き方や、挑戦的だった高度経済成長期の企業の姿勢など、世界をまわればまわるほどに、より日本を好きになります。
しかしその反面、現在の「日本式システム」は、それらのすばらしい箇所を帳消しにするほど、マイナス面が大きいと思います。
バブル崩壊と国際化の失敗から保守的かつ内向きになり、表面的に合理的に思える選択を繰り返し、あたらしい可能性を追求しない姿勢は、多くの人を疲弊させるだけだと思います。
ですので、現在の既得権を持つ人だけに都合のよい内向きな「日本式システム」が瓦解し、本来の日本の素晴らしさを考え直し、誰もが挑戦できる可能性を持つことができる国になれば、日本という国は、世界に輝く素晴らしい国になると思います。
白本(高城剛 著)


日本で生活している我々は、経済やテクノロジー発展の恩恵などを受けて、生活はますます便利で快適になっています。しかし、現状や将来に対して明るいイメージを描きにくく、心や気持ちが息苦しさや閉塞感を感じてしまうのは、いったいなぜなのか?

高城さんの著書でも再三登場するキーワードの「日本式システム」。現代を生きる我々だけではなく、実は過去の先人達も同じくこのシステムに苦しめられてきました。

今回は日本式システムに立ち向かうためのヒントとして、次の一冊をご紹介します。


日本人を苦しめる「空気」の正体

神経をすり減らす人間関係、個性より周囲との協調性を優先する教育、繰り返される組織内での圧力などが今、問題となっています。
息を潜めて、目立つことを避けながらも、周囲を常に意識しなければ不安にさせられる「相互監視的」な日本社会のリアル。
誰もが「空気」に怯えながら、「空気」を必死で読む日々に疲れ切っているように見えます。
「超」入門 空気の研究(鈴木博毅 著)

昭和期の出版経営者、評論家で第二次世界大戦を実際に体験した山本七平氏の名著「空気」の研究。この名著をダイジェストで現代流に再構築した、ビジネス戦略コンサルタントの鈴木博毅氏の著書『「超」入門 空気の研究』をご紹介します。

『「空気」の研究』は文章や構成がやや難解ですが、本書はポイントが分かりやすく整理されていて非常に読みやすい良書です。先に本書を読むことをお勧めします。

日本式システムの基本要素(諸悪の根源)は「空気」です。

日本人は、学校や職場、地域社会といった世間と関わる際に、とにかく「空気」を読むことを事実上強制させられています。

テレビをはじめとするマスメディアはその強制をさらに醸成させ、最近はSNSが加担し、状況はますます複雑になっています。

では、「空気」とはそもそも一体何なのか?本書ではその答えを分かりやすく解説しています。

空気=ある種の前提



そして「空気」を「前提」と置き換えることができると言っています。

・空気を読む → 前提を読む

・空気をつくる → 前提をつくる

・空気に支配される → 前提に支配される


空気は絶対的な支配力を持つ「判断の基準」になります。そして前提に従わないものを徹底的に叩く。さらに悪化すると、前提を押し付け真実を隠す。結果として時代の変化で集団(全員)を悲劇への道連れにする。

今まで何となく、ふわっとしていたイメージが、「空気」を「前提」と置き換えることで、正体が徐々に露わになっていきます。

空気の固定化は集団の問題解決能力を奪い、日本が第二次世界大戦でどのように敗戦に向かっていったかを、本書では解説しています。

その内容が古さを感じさせず、まるで今の凋落している日本の組織や企業と重なって見えることに、何とも言えない複雑な気持ちになります。


”空気”を打破する方法


本書では、ありがたいことに、この「空気」という魔物にどう立ち向かうかのヒントを提示してくれています。

山本氏が指摘する「空気」を打破する4つの起点

①空気の相対化

隠れた前提を見抜け

②閉鎖された劇場の打破

外の光を入れるか、自ら外に出るか

③空気を断ち切る思考の自由

過去の延長線上で考えない

④流れに対抗する根本主義

最も譲れないことは何か?


スティーブ・ジョブズや盛田昭夫氏(ソニー創業者)といった、人々を古い前提から解放して、新たな自由と利便性を与えた例を紹介しています。

時代遅れの古い前提を外し、新たな開放・自由・利便性といったものを生み出すことが、過去を振り返った結果、特に今の我々に求められているのだと感じました。

高城さんは、日本のソフトリセット、またはハードリセットの必要性を説いています。リセットとは「前提」を崩す(場合によっては崩される)ことです。

我々は今どのような「前提」に捕らわれていて、その前提を打破することにより、どのような未来を創造したいのか。真剣に考え行動する時なのかもしれません。

今回は本の内容の一部しかご紹介できませんでしたが、他にも、
  • お笑い芸人は何を読んでいるのか?
  • 外来思想を骨抜きにする日本独自の「翻訳文化」
  • なぜ会議室と飲み屋では意見が変わるのか
  • 多数決原理をわざと誤用する、日本の会議システム
  • 「日本スゴイ論」が破滅への道である理由
  • 歴史が教える事実「空気の固定化は破滅への道」
  • 空気を打破することは、知性を回復すること
など、鋭い指摘が数多く記載されています。ご興味を持たれましたら、ぜひチェックしてみてください。


Link:
「超」入門 空気の研究(鈴木博毅 著)
白本(高城剛 著)