厳しいアメリカの現実
2012年のある1か月だけを見ても、フードスタンプ(低所得者向け食糧補助)を受給したアメリカ人は6500万人もいる。
全米人口の5人に1人が、日本で言うところの生活保護を受けていることになる。
そこには当然、かつて中産階級だった人々も含まれており、誰しもが「明日はわが身」と考えざるを得ないし、この光景は、親米ならぬ従米政策を続ける日本の未来なのかもしれない。
分断した世界(高城剛 著)
経済格差による二極化が日本でも確実に進行しています。昨今の年金問題等を考えると、より一層厳しくなることが予想されます。将来に向けて色々と準備しなければならないと身が引き締まる思いです。
今回ご紹介する書籍「ノマド 漂流する高齢労働者」は、我々がイメージしている”スマートでリッチな”「ノマド」とは真逆で、厳しい現実に直面しているアメリカの人達について書かれています。
高齢者のワーキャンパー(車上生活者)が増加中
ジャーナリストのジェシカ・ブルーダーは、約3年間に渡り、自らキャンピングカーを購入し実際に現地で潜入取材をしています。アメリカでは、2008年のリーマンショックをきっかけに、住宅や年金を失い、中間所得者であっても低所得者に転落した人が急増しました。
さらにUberなどのIT企業による既存業界の破壊がさらなる転落に拍車をかけています。
彼らはホームレスではなく「ワーキャンパー(ワークとキャンパーの合成造語)」と呼ばれています。
多くは白人の高齢者です。収入源は主に短期の肉体労働で、仕事を求めて全米を移動します。
特にワーキャンパーを最も過激に求人をしているのがAmazonです(倉庫内労働。倉庫の壁に痛み止めの薬が貼られています)。
定住以外の生活環境を想定する
本書では、そのような厳しい環境の中でも、逞しく生きるワーキャンパーたちが紹介されています。ボブ・ウェルズ(車上生活のノウハウなどを紹介したサイトを運営)
Cheap RV Living.com(安上がりRV生活)
<参考記事>
デジタル・ヴァンライフ:YouTuberのオン・ザ・ロード | WIRED.jp
特に住宅費は生活費の中で最も大きな割合を占めます。苦境に陥ったときはまず、この部分を工夫することが重要になります。
ワーキャンパーは年々高騰する不動産に首が回らなくなり、車上での生活を選択しています。
高城さんは、著書「私の名前は、高城剛。住所不定、職業不明」で、次のような方法を紹介し実践しています。
Q3
なぜ、定住しないのですか?
A
これには、様々な理由があります。まずは、不安定な時代のあらゆる危機やピンチに備えるためです。それは経済的・政治的危機、天災、それに個人的な問題すべてに言えます。
私の名前は、高城剛。住所不定、職業不明(高城剛 著)
最終的に本書では、著者が密着取材していたワーキャンパーのリンダが自給自足型の自作の家(アースシップ)の建設に向けて動き出します。
Earthship(アースシップ)
<参考記事>
究極のエコハウス!EARTH SHIP(アースシップ)ってどんな家?
これは高城さんの著書等でよく出てくる、ロシアのダーチャ(郊外のセカンドハウス)にも近いコンセプトです。
近いうちに経済危機が訪れると言われていますが、突然収入激減の危機に瀕しても生活(衣食住)を維持できる環境を準備しておくことが、今の時代のリスク対策になりそうです。
読了後は正直気持ちが凹みますが、日本はアメリカの後追いをしている部分が多いので、時代の風を知るには参考になります。ご興味がありましたら、ぜひ本をチェックしてみてください。
Link:
ノマド 漂流する高齢労働者(ジェシカ・ブルーダー 著)
分断した世界(高城剛 著)