歴史を理解し、未来を見通す。
先日の高城剛さんのメルマガ(Vol.550)で紹介されていた雑誌です。「コンピュータを徹底的に学ぶ」ための手始めとしてこの雑誌が紹介されていました。
Spectator(スペクテイター)は1999年に創刊した年3回刊のカルチャー雑誌です。
今号48号「パソコンとヒッピー」では「これだけは知っておきたい基本ルーツ パソコンの発生とヒッピーの発想(1968-1984)」と題し、パーソナルコンピュータの歴史をマンガでわかりやすく描かれおり、読みごたえがあります。
なぜ、ヒッピーがパソコンを作ったのかがわかります。
今までコンピュータ関連の本や記事などで得たバラバラだった情報が、一つの線に繋がり、時系列や文脈を整理することができました。また1970年代のカリフォルニアの様子も描かれているので、高城さんが影響を受けたカウンターカルチャーについての理解が深まります。
近年は、電子情報の氾濫、スマホ・SNS中毒の弊害、言論統制・監視社会の進行といったネガティブな側面や、WEB3.0、メタバース、NFT、5G・6Gといった次から次へと現れる新しいテクノロジーやトレンドに振り回されそうになります。
改めてパーソナルコンピュータの歴史を学び、先人達がどのような想いで産み出し、世の中に普及させていったのかといったルーツを知ることにより、人とテクノロジーが上手く共存できる未来に進むための足がかりになる一冊です。
1960年代から70年前後、大きく時代がうねった。
いまでは忘れ去られているが、パソコンは中央権力の象徴ととらえられていた大型コンピューターに対抗する「個人の解放ツール」として、ヒッピーにより考案されたものだった。ヴェトナム戦争のさなかに「人間とは何か」を根源から考え直そうとした米国の若者たちにとって、LSDもコンピュータも、ともに個人の内面をさぐるための道具として、等しい価値観でとらえられたものである。
パソコンは「POWER TO THE PEOPLE(人民に力を)」を標榜するヒッピーが生み出した。しかし、それにもかかわらず考案者の手を離れ、国家や大企業によって全体管理に利用されるツールとなってしまった。
はたしてデジタル技術は本当に未来を切りひらく「夢の技術」なのか?
パソコン革命はワープロやエレクトロニクスによる表計算に関するものではなく、人間の意識改革に関するものだった。人間とコンピュータの共生生活こそ精神の働きを拡大する、まさにもうひとつの様式だった。80年代のLSDがこれだった。
巨大コンピュータはフェルゼンスタインにとって、戦争と管理のための悪魔のツールで、パソコンは個人がドロップアウトするための天使のツールだった。
マッキントッシュ(マック)は個人の知的能力を拡大してくれる身近なツールであり、ジョブズの表現を借りれば「知的自転車としてのコンピュータ」だった。アメリカ社会にマックは革命をもたらした。
まだまだ、やることはたくさんある。ぼくたちは人間とマシンの関係を、もっと共生的なものにしていかなければならない。
アーミッシュは一度使用を許可したものでも、社会に悪影響を及ぼすことがわかれば、その時点で司祭たちは使用を禁止する。真理は変更されるもの、ととらえる。「Uターンする勇気」を彼らは持っている。
われわれは過剰にむかう暴走列車のような社会に住んでいる。しだいに社会が暴走しはじめていることに危惧をおぼえながら、「とりあえずいいや」と、そのまま必死に火だるまの列車にしがみついている。科学へ邁進することは社会全体を危うくするということを、アーミッシュから学んでみてはどうか。
目次
特集:パソコンとヒッピー CONTENTS
パソコンの発生とヒッピーの発想
- 0. 「全地球(ホールアース)」という世界観をもとめて
- 1. コンピュータとヒッピーを結びつけた『ホール・アース・カタログ』
- 2. ターニング・ポイントだったヴェトナム戦争
- 3. LSDとコンピュータは同じツールだ
- 4. サンフランシスコ・バークレーは学生運動とヒッピー文化発祥の地
- 5. コンピュータはソ連とアメリカの冷戦で成長した
- 6. 「ハッカーは遅れてきたビート族、初期ヒッピーカルチャーと同じ人種だ」とスチュワート・ブランドは笑った
- コンピュータのABC
- 1960年代のテクノロジー
- 1970年代のテクノロジー
- 1980年代のテクノロジー
- 7. 「人民のためのコンピュータ」と言う思想が生み出された
- 8. パソコンは人と人がつながるための有用な道具だ
- 9. アルテアの衝撃。ミニ・コンがビートルズを唄った日
- 10. ハイ・テク時代のトリックスターがハッカーだった
- 11. もっと共生的に。人間とパソコンの関係
- 12. われわれはスローなギークになれるか?(編集部による考察)
THE OTHER SIDE OF COMPUTER & COUNTER CULTURE
- #1 自然派ヒッピー? 電子派ジッピー? 真のカウンター・カルチャーを体現するのはどっちだ? 能勢伊勢雄
- ♯2 〝指紋〟と〝コンピュータ〟の知られざる関係 高野麻子
関連本